あなたの身近な人で
親指の付け根が痛いと訴える方はいませんか？

それってもしかすると・・・

”母指CM関節症”では
ないでしょうか？

急に”母指CM関節症”と言われても
「聞いたことがない」という方が
ほとんどだと思います。

実は、この疾患ですが、
以外と身近に潜む運動器障害の一つです。

ですが、CM関節症は早期であれば
必ず徒手治療で治すことが可能です。

興味がある方は
ぜひ、参考にしてみてください。

CM関節？
聞かない場所だな・・

そもそもCM関節とは？

英語では、”Carpometacarpal Joints”
と呼ばれ、手根中手関節と訳されます。

言葉の通り、手の骨である
手根骨と中手骨の間にある
関節だということが分かります。

そのため、CM関節は、
思ったよりも手の近位に位置しています。

特に今回話す母指のCM関節は、
母指の第１中手骨と大菱形骨の間
にある関節です。

母指CM関節の機能は、手掌の窪んだ形が
様々な物体に適合することを
可能にしていると言われています。

簡単に言うと、
母指が他の指と向き合って
つまみ動作ができると言うことです。

この特徴が人の手で最も特徴的な一つで
親指が発達していることを指しています。

円柱状のものを持つことや
細かい動作、親指に力を入れる作業などは、
この関節が要となって行うことができます。

では、話を元に戻すと・・・

母指CM関節症とは
一体どんな疾患なのか？

母指CM関節症とは、
関節軟骨の磨耗が生じ、関節の腫れや
痛みを伴う母指の変形性関節症です。

中年女性の10%以上が罹患し、
閉経女性の１/4から１/３において
X線状関節症変化を認めると報告されています¹⁾。

よく変形性関節症は、
股関節や膝関節に注目されていますが、
母指CM関節にも変形性関節症は存在します。

理由としては、人の活動は手を中心とした作業が多い
ことが挙げられます。

特に、職人や主婦業、趣味など
幅広い分野で手先を使った作業活動に
多くみられる疾患だと言われています。

持続的な関節への負担が
CM関節に影響を受け続け
最終的に痛みに繋がります。

母指は手の機能の40%、
全身機能の１/４に関与するとされ、
高齢者の生活レベルを障害する
要因の一つとなると言われています。

このことからも
母指CM関節症には
誰もがなりやすい疾患だと言う
ことが分かりますね。

では、母指CM関節症は
どんな治療法がされているのか？

詳しく話していきます。

母指CM関節症の
治療法

基本的には、保存療法が推奨されています。

消炎鎮痛剤などで痛みを緩和し、
装具やテーピング、サポーターなどで
対応することが多いです。

しかし近年、スプリントによる固定や
関節内のステロイド注射などの
保存療法が行われてきたが完治しない症例が多く、
手術的治療も現在では注目されています。

ですが、母指CM関節症も
よく言う変形性関節症の一つであるため
関節への負担を減らす治療法が大切です。

特に負担となりやすい
母指内転筋や外転筋の治療をすることは
母指の屈曲・内転への負荷が減り
作業動作への痛みが急激に減りやすいです。

また、予防としては、① 作業課題を一旦中止する
② 周辺組織の筋・筋膜を緩めるなどが
推奨されています。

では、私たちセラピストは
どんな治療を行うのか？

症例を踏まえ話していきます。

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50歳代前半の女性。

専業主婦をしており、二人の娘がいます。

娘は、二人とも自立され
現在では夫と二人暮らしです。

もともと、几帳面な性格で
毎日隅々まで掃除や洗濯などの
家事を行うことを日課にしていました。

ですが、2ヶ月前から
母指の付け根に違和感があり
痛みが生じるようになりました。

その後、1ヶ月ほど
安静にしていましたが、
家事をやめることはできず
病院へ行くことにしました。

医師からは、
画像上に大きな異常はないが、
親指の関節が小さくなっているのが
原因だと言われました。

診断を受けると”母指CM関節症”だと言われ
手術を勧められました。

付け根の痛みがありましたが、
いきなり手術をしろと言われても
勇気も出ず、一旦家に帰りました。

さらに１週間が過ぎ、
痛みが変わらないことで
手術を踏み切ろうと思った時

夫が近くの治療院を見つけ
病院へ行く前に治療を受けても
いいのではないかと言いました。

できれば手術したくなかったので
藁でもすがる思いで治療院へ行きました。

すると、治療院の先生も
母指CM関節症だと
同じことを話していました。

これは手術だと思った瞬間・・

先生からは親指の筋・筋膜を緩めることで
痛みはだいぶ落ち着くと言われました。

その言葉にほっとした思いが強く
すぐに治療をお願いしました。

すると、あれほど痛かった痛みが
ほぼ消失し、握れなかった動きが
行うことができました。

先生からは、
確かに関節の隙間の原因もありますが

その周辺の筋肉にも大きく関係していると
言われました。

再度、病院へ行くと
医師からは、痛みがないなら
手術はしなくてもいいですねと言われました。

現在では、週に1回治療を受け、
３週間が経過しましたが、ほとんど
痛みなく過ごすことができています。

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では、この症例にどんな治療を行ったのか？

大まかな治療の流れとしては・・・

① 母指CM関節の周辺組織を緩める
② 母指内転筋・外転筋・前腕屈筋群の筋攣縮・短縮を改善
③ CM関節に対する副運動

この３項目で関節への負担が大幅に軽減します。

②の母指内転・外転筋の筋・筋膜を緩める治療は
自主訓練でも取り入れることができるため
患者さんには徹底的に指導します。

治療のポイントに
特に起始・停止に対して治療をする
ことを勧めています。

母指CM関節症では、
関節の近い側に筋の攣縮が発生しやすく
痛みの物質を出していることが多いのが理由です。

さらに、全体の姿勢バランスを調整することを目的に
アナトミートレインである
ディープ・フロントアームライン（DFAL）に
対して治療をすることもオススメです。

DFALは、母指から胸部前面までを
安定させるラインです。

このライン上では、手作業を多くする方では
ほぼ筋短縮を起こしているケースが多いです。

そのため、上の３つの治療＋DFALの治療をすることでも
予防になると考えています。

ぜひ、参考にしてみてください。

まとめ

今回の記事では、
”母指CM関節症”についてお伝えしました。

・この疾患は、いわゆる変形性関節症である
ということ。

・手の作業活動では誰でもなりやすいが
特に中年女性には多い疾患

・最近では、手術が推奨されているが
痛みに関しては、筋・筋膜の治療も効果的

この3つを覚えて帰って頂ければ
治療として役立ちます。

今回の記事が
少しでもあなたの臨床で
役立つことができれば幸いです。

頑張っていきましょう。

ー医療研究チーム

参考文献

１）Murray PM：Treatment of the osteoarthritic hand and thumb.Wolf S, et al ,ed . Operative Hand Surgery . Philadelphia ； Elsevier , 2017 ; 345-372.
２）安倍幸雄：母指CM関節症の最近の治療の動向,日関病誌,36(2):163-168,2017.
３）白井久,他：母指CM関節症に対するhematoma distraction arthroplastyの治療成績,日手会誌,2014;31:130-133.
４）坂野裕昭,他：母指CM関節症に対するsuture button suspensionplastyを併用した鏡視下関節形成術.日手会誌,2016;32;726-730.
５）玉井進,他：母指CM関節症における大菱形骨単純切除術と靭帯形成術との比較検討,日手会誌,2014,30;983-986.