- 2020年7月23日
鵞足炎に対する運動療法
もし、あなたが、
”膝の痛みを抱えた”方を治療し
それを治せるセラピストなら
あなたは必ず信頼されます。
なぜなら、ほとんどのセラピストは
膝の仕組みや痛みの原因を理解しきれて
いないからです。
それには3つの理由があります。
まず、大きな一つに大学や専門学校で
”膝の痛み”に対しての治療を
教わらないことが挙げられます。
これに関しては、とても残念なことです。
高額な学費を払っているにも関わらず
座学が多く、臨床で生かした治療技術を
伝える学校は少ないです。
そのため、授業と臨床での
ギャップを感じる人が多く
膝の治療ができないのもその一つです。
二つ目は、痛みが強ければ手術といった
認識があることです。
特に日本人は、”医師が話したことは
全て信じる”ことが当たり前となっています。
ですが、膝の構造を理解すれば
手術はいいのでは?と言う症例は
多くいます。
あなたも完全に頼り切るのは
やめて、自分で考えて下さい。
それでも、すぐ膝にメスを入れますか?
最後の原因としては、
セラピストのやる気の問題です。
あなたは知っていますか?
ほとんどのセラピストは
国家資格を取ってから勉強なんてしていません。
ただ、治療を行って
その日を終えるセラピストが多いのが
現状です。
なぜだと思いますか?
これに関しては、
資金の問題、家庭の問題、
プライベートの問題など
多々挙げられます。
ですが、一概に言えるのは
あなたが治せなくても
医学を知らない患者さんは
そんなものかと思い込みます。
あなたを責めるのではなく、
自分を責める患者が多いです。
私は本当に思います。
そんなことでいいのでしょうか?
医学は毎日進歩しています。
私たちのスキルももっと前進しないと
いけません。
今回は、膝の痛みの中でも
若年から年寄りまで抱える
”鵞足炎について”お話しします。
本気で治したいと思う方は
是非読んで目の前の
患者さんと真剣に向き合ってください。
では、始めていきます。
鵞足炎とは
どんな疾患なのか?
これを理解するには、
まず”鵞足”とはどんな
場所なのか?
を知る必要があります。
鵞足は、膝関節内側全面に位置する
半腱様筋(坐骨神経支配)、薄筋(閉鎖神経支配)、
縫工筋腱(大腿神経支配)が付着している
場所を指します。
この付着している場所が
”鵞鳥の足”の形をしていることから
鵞足と呼ばれ始めました。
最近の面白い研究に
なぜ、それぞれ支配神経が異なる筋群が
鵞足を形成しているのか?と説いた
研究があります。
私自身は、歩行や走る際に
単なる膝の補助的なサポートをする
機能だと考えていました。
ですが、実際は、
両腕を使って交互に枝を渡っていた先祖(霊長類)が、
地上に着地した時に体重を支えるための
機能から得た場所だと考えられています。
まだまだ、知らないことが多いですが
人間の進化には必ず理由があるので
それを考えてもイメージしやすいと思います。
ちなみに、鵞足構成筋がモグラでは、
膝関節を屈曲して保持する
等尺性収縮筋として働いています。
話が逸れましたが、
鵞足炎はどのようにして生じるのでしょうか?
鵞足と内側側副靭帯の間には”鵞足包”が存在し、
鵞足筋腱の活動性を高め、摩擦を軽減させています。
この鵞足包が過度な運動や鵞足に摩擦ストレスが
生じることで痛みが誘発されたものを”鵞足炎”と
呼ばれています。
また、鵞足の筋腱移行部とその付着部には、
侵害受容器が多く分布しており、
鵞足に生じる過剰かつ反復する機械的ストレスは、
疼痛出現の引き金となります。
どうして・・・
鵞足炎になるのか?
鵞足の発生機序としては、
実は、スポーツ障害膝の代表疾患であり、
過度なストレスで痛みが誘発されやすい
場所だと言われています。
また、変形性膝関節症でも同様に
鵞足炎を合併することがあります。
ですが、スポーツ障害の場合は、
下肢のアライメントをみると、
膝関節外反・下腿外旋位を呈していることが多いです。
反対に、変形性膝関節症の場合は、
膝関節内反・下腿内旋位を呈していることが多いです。
それぞれの生じた方が異なる点は
臨床上大切なポイントです。
では、鵞足炎になった場合は
どうすれば良いのでしょうか?
現代医学の
鵞足炎に対する治療法とは?
鵞足炎は要するに滑液包の
炎症であるため、基本的には
保存療法が選択されます。
より炎症が強い場合は、
アイシングや挙上など
炎症期の治療が必要です。
最近では、理学療法も推奨されており
少しずつ徒手治療も取り入れられています。
慢性化すると手術なども検討する
場合があるので、医療機関との連携も必要となります。
ここで、私たちが鵞足炎に対する
治療法をお伝えします。
上記の考え方+筋・筋膜治療を行っています。
では、学んでみましょう!
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50歳代女性
一般病院で20年間勤務している
ベテラン介護士です。
もともと、腰痛を持っていた彼女ですが
半年ほど前に膝痛を生じるようになりました。
気になった彼女は、医師へ診断を受ける
ことにしました。
医師からは、「関節の隙間が狭いですが、
これは鵞足炎と呼ばれる疾患だ」と
言われました。
特に、治療法は確立されていないので
安静と痛み止めを処方されました。
ですが、この1ヶ月ほど
踏ん張る場面や歩く際でも膝の内側が強くなり
介護をするのにも負担が生じました。
そのため、同じ病院で働く
理学療法士の先生に
治療を依頼しました。
すると、たった1回、
膝を治療してもらうだけで
ほとんど楽になりました。
理学療法士の先生からは、
「炎症期は乗り越えているので
その際に硬くなった筋・筋膜の影響が
強いですね」と言われました。
その後は、自主訓練や歩き方、
介助方法を丁寧に教えて頂き、
続けることで、痛みはほぼ消えました。
※ イメージ画像
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では、一体どんな治療を行ったのか?
ポイントは、”薄筋”をみる
ことが最大のポイントです。
薄筋について
少し解剖学知識を知っておきましょう。
薄筋(Gracilis Muscle)は、
恥骨結合の外側に起始し、
脛骨粗面内側に停止します。
股関節内転筋群の中には、
唯一の二関節筋であり、
最も内側に位置しているのが特徴です。
作用としては、股関節内転・屈曲、
膝関節には屈曲および下腿の内旋に働きます。
また、鵞足炎では、3つの筋のうち
薄筋がもっとも負担となりやすく
炎症後も筋攣縮や短縮を引き起こしやすい
部位の一つです。
そのため、薄筋を治療することは
鵞足炎にとって最大のポイントであり
疼痛治療に欠かせません。
また、筋膜ライン上で
みるべきポイントとしては、
ファンクショナル・ライン(Functional-Lines;FL)も
みるべき一つです。
FLは、上肢から体幹表面を通って
反対側の骨盤と下肢まで達する
アームラインの延長です。
FLの特徴としては、立位姿勢の調節には
ほとんど関与しないことです。
主に、運動やスポーツ、その他の活動時に機能し、
四肢の複合体を安定化してバランスを保つ、
あるいは反対側との相互作用によって強化されます。
簡単に言うと、土台の体幹を安定させることで
四肢の動きに負担なく、細かい運動を成立させています。
FLを治療しても、膝関節に負担が軽減する場合が多く、
治療の一つとして覚えておいても良いと思います。
まとめ
今回の記事のまとめに入ります。
一つ目は、
ほとんどのセラピストが
痛みに対する治療ができない
二つ目は、
鵞足炎を知るには、
鵞足を知る必要がある
三つ目は、
鵞足炎は、鵞足包の炎症
最後に
治療には、薄筋とFLを取り入れる
今回は、この4つを覚えて帰ってください。
最後まで読んで下さり
本当にありがとうございます。
この学びが
明日からの臨床に繋げられれば
幸いです。
ー医療研究チーム
参考文献
1)高橋裕,他:鵞足構成筋は立位2足歩行獲得にどう関与したか.第24回日本霊長類学会大会,2008.
2)吉井一郎,他:内反型変形性膝関節症の下腿の回旋変形-片脚立位X線像を用いた評価法-整形外科と災害外科,37:(3)1000~1003.1989.
3)江戸優裕,他:踵骨-下腿の運動連鎖と変形性膝関節症の関係-荷重位における踵骨回内外と下腿回旋の運動動態の解析-,文京学院大学保健医療技術学部紀要,第7巻,2014.
4)越水さゆき,他:滑液包の役割の追求-鵞足包への機械的刺激前後のSLR変化に着目して-,理学療法学,2009.
5)赤羽根良和,他:鵞足炎におけるトリガー筋鑑別テストについて,理学療法学,2014.
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