- 2020年3月11日
変形性股関節症の痛みには
疼痛治療大学の受講生より
変形性股関節症について
質問がありました!
【質問】
変形性股関節症の疼痛の為
足が上がりません。
どうしたらよいでしょうか?
【一般的事項】
変形性股関節症とは
股関節の軟骨に変性摩耗が生じる疾患で,
強い疼痛と関節可動域の減少により
日常生活動作の制限をきたします。
一般に変形性関節症の成因は
解剖学的な異常がみられないものの,
過度の使用や加齢に伴い
軟骨の摩耗が生じて発症する一次性関節症と
様々な股関節部の外傷や感染・関節リウマチ
さらには発育における関節の形成不全などに
起因して発症する二次性関節症に大別されます。
わが国における
変形性股関節症の約80%が
二次性股関節症とされており、
その中でも
発育性寛骨臼形成不全や
発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)に起因したものが多く、
罹患者の約90%が女性です。
正常な股関節は、
関節窩が深く形成されていることと、
臼蓋の被りが深い事で
大腿骨頭の圧分散が図れます。
しかし、
関節窩が浅く臼蓋の被りが少ないと
変更が進行していきます。
進行度は以下の4つに分類されます。
・前期
関節軟骨の肥厚は保たれており、痛みは生じません。
・初期
動作時に痛みが出始めます。
臼蓋の被りが少ない状況下では
大腿骨頭の圧分散が十分図れず
関節軟骨の摩耗が生じます。
これは関節腔を狭小化させます。
・進行期
関節軟骨の摩耗が進行し、
関節窩を広げるために骨棘が形成されます。
また、関節軟骨と関節腔がほぼ消失し
骨がむき出しになります。
さらに関節液が骨に浸潤して
骨嚢胞ができます。
そして
動作時だけでなく、安静時も疼痛が出現します。
・末期
骨嚢胞の肥大化を認めます。
この状況では動作時・安静時ともに
激痛が生じます。
関節軟骨はほぼ消失しています。
接地面の増大のために
大腿骨頭の扁平化が生じます。
変形性股関節症で痛みが生じる機序は
以下の2つに分類されます。
①関節内に起因する要因
関節軟骨の摩耗で
軟骨片が関節内を浮遊し
骨膜を刺激することによる炎症。
②関節外に起因する要因
股関節の脱臼を予防する
姿勢を作ることにより、
腸腰筋や股関節内転筋群の筋肉が
過緊張し、筋虚血に伴う疼痛。
股関節は球関節、
前方に不安定性が大きいのが特徴です。
通常立位では、
大腿骨骨頭が前方突出します。
その時、
腸腰筋が前方脱臼を予防するように
作用します。
そして、
変形性股関節症では
腸腰筋を過緊張させる戦略をとります。
これにより骨盤前傾の増強
大殿筋の機能不全
脊柱起立筋過緊張・腰椎過前弯
頸椎過伸展・僧帽筋上部過緊張
等が生じます。
また、
疼痛によって運動量が低下してくると
中殿筋の機能が落ち、
次は股関節内転筋で代償をし始めます。
変形性股関節症の治療としては、
生活改善・運動療法・薬物療法・手術療法
があります。
前者3つを行っても
痛みが改善されない場合に手術を検討します。
主な手術には
関節鏡手術・骨切り術・人工関節手術があります。
【JPRの強み】
上記に挙げた筋に対するアプローチだけでなく、
離れた所にある
障害部位の影響もみることで
全体的な調整を
行うことが可能です。
【考察】
画像を拝見していないので
明言できませんが、症例は初期段階でしょうか。
この症例に対して行いたいことは3つです。
①生活習慣の見直し
日常的な動作で
股関節に負荷がかかる動作がないかを確認します。
また、
肥満の方には無理のない範囲で
減量をすすめます。
②免荷
関節内に起因する疼痛でしたら、
関節を刺激しない事、つまり安静が必要です。
しかしながら、
ずっと安静にはしていられないので
歩行補助具を用いることを検討します。
③姿勢の調整
過緊張になっている筋への
アプローチを行います。
しかし、
その筋のテンションで脱臼を防いでいる
可能性もあるので、緊張を落としすぎても
アンバランスになります。
ですから、
様子をみながら行うことが必要です。
股関節に障害があると、
足関節にも影響が出ますので
みてみてください。
そして、
もし下肢長に差があるのであれば
靴の補高も検討します。
【アクションプラン】
日常的に股関節に負荷がかかる動作を
減らしましょう。
また、免荷も考慮しましょう。
さらに、
過緊張になっている筋や
姿勢へのアプローチを行いましょう。
医療研究チーム
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